民主党 長浜ひろゆき
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長浜博行君:

 国会議事堂前から千代田線でわずか一時間余りのところで、二十一年間にわたり連続して日本一水質の悪い手賀沼を抱える地域から選出をされております長浜博行でございます。
 私は、新進党を代表して、そして失われた自然環境を取り戻すことがいかに困難かを実感する者の一人として、ただいま提案されました大気汚染防止法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに環境庁長官に質問いたします。
 橋本総理はかねてより環境問題に御見識が深いとお聞きしております。総理は、自由民主党が野党であった平成五年十月、細川内閣のときですが、環境委員会において一委員として質問に立たれました。その真摯な姿勢は、環境のみならず崩れ行く日本をどう救うかという問題意識のもと、微力ながら日夜悪戦苦闘をしている一年生代議士の私といたしましては、素直に評価できるところでありました。
 しかし、今国会冒頭の施政方針演説を拝聴しても、また昨今の総理の行政運営を拝見していても、身近なところから地球規模にわたる広範な環境問題への取り組みについて、強力な政治的リーダーシップを発揮されているようには残念ながら感じられません。
 今後の日本社会を展望するとき、我々国民一人一人が環境の大きな恵みに支えられて生活が営めていることを十分に認識し、一九九二年の地球サミットの成果やその翌年の環境基本法の制定を踏まえ、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会の実現、換言するならば、環境保全を基礎とした経済社会の構築という視点に立脚して、具体的な政策展開を行う必要があると考えます。
 と同時に、あえて申し上げれば、我が国憲法では、基本的人権としての環境権について明確に表現している条文はございません。先進諸国のみならず、発展途上国においても憲法に環境権を規定している国々が少なくありません。我が国においてもできるだけ早い時期にその実現を図るべきとの意見もございますが、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 あわせて、環境保全型社会の構築に向け国政全般にわたって環境意識を浸透させるためには、私が以前から委員会審議の中でも主張いたしておりますように、総理が環境庁長官を兼務をされて、厚生、商工、運輸、さらには公共事業を含む建設等々、諸行政における環境への影響に目を光らせていくべきだと考えます。総理は、環境行政を国政全般の中でどのように位置づけ、今後の取り組みを進めていかれるおつもりか、その所信をお伺いいたします。
 申すまでもなく、環境を構成する要素の中でも、大気は生物の生存や人類の健康に深いかかわりがあり、きれいな大気を確保することは何にも増して重要な課題であると考えます。こうした観点から、改正法案の内容についてお伺いします。
 大気汚染防止法は、私たちの生存の基盤である大気を清浄に保ち、国民の健康で文化的な生活を確保するための背骨ともいうべき極めて重要な法案であります。
 我が国は、昭和三十年代から四十年代にかけての高度経済成長に伴い、硫黄酸化物やばいじんによる激甚な大気汚染が生じ、多くの人々がぜんそく等の健康被害に苦しめられた、忘れることのできない厳しい経験をいたしました。
 そのような情勢を踏まえて昭和四十三年に制定された大気汚染防止法は、昭和四十五年のいわゆる公害国会における規制強化のための改正以来、四十七年の無過失損害賠償制度の導入、四十九年の硫黄酸化物にかかわる総量規制制度の導入により、これらの激甚な大気公害の改善に大きな役割を果たしてまいりました。
 しかしながら、大都市地域における自動車排出ガスを主因とする窒素酸化物汚染問題、広域的な酸性雨問題など、大気汚染をめぐる問題は山積しており、とりわけ今回の法改正案に盛り込まれた有害大気汚染物質の問題は極めて重要な課題であると認識しております。
 私たちは、高度な産業社会の中で、一層の利便を求めて種々の化学物質を生産や消費の場で使用していますが、それらが大気を初めとする環境に放出された後についてどれほど留意しているでしょうか。私自身にも一歳になったばかりの幼児と卒寿を迎えた祖父がおりますが、赤ちゃんからお年寄りまでだれもが呼吸する空気にどのような物質が含まれているのか正確に把握し、必要な対策を講じていくことは、現代を生きる世代の責務でございます。
 海の向こう、アメリカ、ドイツ、オランダなど欧米先進諸国では、空気中に含まれる有害汚染物質について既に対策に着手しているとのことですが、公害対策先進国と自負する我が国は、この分野での対応がおくれていると言わざるを得ません。
 そこで環境庁長官にお伺いをいたします。今回の改正法案はどのような認識で立案されたか、改正法案立案の趣旨と背景についてお答えください。次に、今回の改正法案の細目について質問いたします。
 改正法案では、有害大気汚染物質対策として、本則において、事業者、国、地方公共団体、国民のそれぞれの責務を規定し、まず事業者の自主性による取り組みを推進することが対策の第一歩となっております。その上で、改正法附則により法施行後三年を目途として制度を見直すことを規定し、その後の状況を踏まえて一層の対策の推進を図るという考え方であると理解しています。
 私は、概念的には、今後の環境行政においては、各主体の自主的、積極的な環境保全の努力を最大限引き出すことが肝要と考える立場ですが、本改正法案においては、国民の健康を守る見地から、このような方法では手ぬるいのではないか、人の健康に影響を及ぼすおそれのある物質については罰則でしっかりと担保した規制的な措置を講ずる必要があるのではないかと考えます。
 長官に伺います。有害大気汚染物質についてなぜ直ちに規制措置を講じないで事業者等の自主的な取り組みを推進することとしたのか、また、これで十分国民の健康が守れると考えておられるのか、御答弁を願います。
 次に、二輪車の排出ガス規制についてであります。
 今日、交通に起因する大気汚染は最も深刻な公害問題であります。したがって、自動車排出ガスの規制を強化していくことは極めて重要な施策と思います。他方において、既に開発が進んでおり商品化が待たれる電気自動車を初めとするいわゆ
るエコビークルにも注目が集まっています。
 本改正法案は、これまで自動車排出ガス規制の対象外であった原動機付自転車を規制対象とするものですが、当然のことと思います。いや、むしろ、諸外国では、東南アジアの諸国を含め、既に二輪車排出ガス規制が実施されている現状を見るにつけ、我が国の対応は遅きに失しているのではないかという疑問すら持ちます。
 長官にお伺いしますが、なぜ今まで二輪車排出ガス規制を講じてこなかったのか、また、今回の改正により、二輪車製造業者が早急に対応し、より環境に優しい二輪車を販売することができるという見通しを持っておられるのかどうか、明確にお答えを願います。
 次に、アスベスト規制についてお尋ねします。
 アスベストの危険性は既によく知られており、現に大気汚染防止法では、アスベスト製品を製造する工場等に対する規制措置を平成元年に導入しております。今改正法案では、建築物の解体等に伴い現場において飛散するアスベストの規制を導入することがポイントになります。国民のアスベストによる健康への影響の懸念は、阪神・淡路大震災後の建築物の解体等に伴うアスベスト汚染についての不安の声に代表されますように、非常に大きいものがあります。今回、一層のアスベスト規制の推進を図ることは一定の評価をするものですが、先ほど述べましたように、建築物の解体時のアスベスト対策がなぜ今日までおくれたか、環境庁長官、お答えください。
 最後になりましたが、もはや「空気と水はただ」といった時代ではありません。現に、残念ながら、飲料や調理にはお金を出してミネラルウオーターを買ったり、水道の蛇口に浄水装置を取りつけている一般家庭の数は、ウナギ登りのありさまです。
 一人一人が気配りをしながら守っていかなければならないものがあります。健康であり、環境であります。わずか一円玉一個でも、一億人が出すならば一億円という大金なります。たばこの煙はどうでしょう。御自身の喫煙習慣を是正されることはもちろんですが、昨今のテレビや新聞報道等にもありますように、他の人のたばこの煙を吸わされること、すなわち受動喫煙、強制喫煙が、肺がんや心臓病、動脈硬化、そして乳幼児へ与える影響等の誘因となることは、医学的にも証明されています。
 喫煙者並びにその周辺の皆様のお体を御心配申し上げますとともに、大気汚染防止の観点から、橋本総理を初め賢明なる議員諸兄の御理解と御協力をお願いして、余り申し上げますと時には健康以上に微妙な人間関係を害することになりますので、この程度にさせていただきますが、大気汚染防止法の一部を改正する法律案の質問を終わらせていただきます。(拍手)

内閣総理大臣
(橋本龍太郎君):
 長浜議員にお答えを申し上げます。
 まず、環境権につきましては、現行憲法の上におきましても第二十五条に由来するものとして理由づけができるのではないか、そうしたことを考えてまいりましたが、これを憲法の条文に基本的人権として明確に表現しろという御意見につきましては、当然のことながら憲法改正の手続が必要になります。
 憲法をめぐる議論が行われること自体は、何ら制約されるべきものでないことは言うまでもありません。しかし、環境権につきましては、現在、その内容や法的性格についてさまざまの考え方があるところでありまして、国の基本法である憲法を改正し、その条文に環境権を明定することについては、なお世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮が必要ではないかと考えております。
 また、我々は、議員御指摘のように、環境の大きな恵みに支えられて健康で文化的な生活が行える、そのとおりであります。そして我が国の環境、そして地球環境というものを健全な状態に保全し将来の世代に引き継いでいくことは、我々の世代の大きな役割でもあります。我が国としても、大量生産あるいは大量消費、大量廃棄型の経済社会活動あるいは生活様式を問い直し、みずからの社会を環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会に変えていく必要があり、環境行政は今後の国政運営の中でも重要な柱の一つであります。
 でありますからこそ、政府は、平成六年末、環境政策の長期的な目標や二十一世紀初頭までの施策の方向を明らかにした環境基本計画を閣議決定いたしました。そして、政府一体としての施策の展開を図ってきたところであります。今回御審議いただく大気汚染防止法の改正案を初め、今後とも、環境基本計画に基づき、人と環境の間に望ましい関係を築くための総合的施策の推進に全力を挙げていきたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
国務大臣
(岩垂寿喜男君):

 長浜先生にお答えをいたします。
 今回の改正法案の立案の趣旨と背景についてのお尋ねでございますけれども、先生御指摘のように、近年の我が国の大気環境の状況の調査結果によりますと、ベンゼン等種々の有害大気汚染物質が低濃度だけれども検出されております。そして、一部の物質については、長期間にわたってそれを摂取した場合に人の健康への影響が懸念されるに至っております。
 そういう意味で、これまで大気汚染防止法に基づいて硫黄酸化物あるいは窒素酸化物を中心にした規制措置を講じてまいりましたけれども、一九九二年の地球サミットで採択されたリオ宣言や環境基本計画の趣旨に照らして、有害大気汚染物質についても、健康影響の未然防止の見地から、実施可能な対策を速やかに講じていくことが適当だと考えたわけでございます。
 国際的にも、先生御指摘のように、有害大気汚染物質について各国が対応に着手しつつあること、特にアメリカなど幾つかの先進諸国においては数多くの有害大気汚染物質を対象として既に対策を推進しております。
 今回の改正法案は、以上のような状況を踏まえて、我が国としても、有害大気汚染物質について、健康影響の未然防止の観点から、現時点で現実的でしかも実効のある対策が速やかに講じられるように考えまして立案したものでございます。これによって、大気環境行政の大事な第一歩が踏み出されることになるというふうに認識しておりますので、どうぞ御理解を賜りたいと思います。
 それから、有害大気汚染物質について事業者等の自主的な取り組みを促進することとしたことについてのお尋ねでございますけれども、有害大気汚染物質は、物質の性状として人の健康に有害な影響を及ぼすおそれのある物質でありますが、その健康影響に係る知見あるいは大気環境濃度、さらに発生源条件等については、必ずしも十分に情報やデータが整っているわけではございません。一層の情報収集、知見の蓄積等が必要だと考えております。
 しかし、健康影響が顕在化してから取り組むのでは、これはもう後手でございますから、そうならないように科学的知見の充実を図りつつ、健康影響の未然防止の観点に立って、現時点で現実的かつ実効のある対策を速やかに講じるという立場に立ちます。したがって、現時点において有害大気汚染物質について直ちに規制措置を講ずることは必ずしも適当ではなく、将来にわたって健康影響を未然防止する見地と実施可能な対応から着手するという考え方に基づきまして、まずは排出状況について最も実際的な知識と情報及び排出抑制手段を持っている事業者による取り決めを求めることとしたものであります。
 また、有害大気汚染物質の中でも、現状の大気環境の状況等から見て早急な排出抑制の取り組み
が必要と認められる物質については、附則において、排出抑制基準の設定、勧告、報告聴取による確実な排出抑制対策を講じていく所存でございます。
 さらに、この改正法案の附則においては、法施行後三年を目途として制度のあり方について検討を加えまして、その結果に基づいて所要の措置を講じていくことを規定しておりますので、法施行後の新たな知見の集積、排出抑制の取り組み状況や大気環境の状況の変化等を総合的に勘案して、国民の健康影響の未然防止の見地から適切な対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
 それから、今まで二輪車排出ガス規制を講じなかった理由についてというお尋ねでございますが、二輪車については、従来、大気汚染への寄与率が相対的に低かったことから排出ガスの規制の対象とするに至らなかったわけでございますが、今日では二輪車の走行台数が極めて多い、千六百万台というふうに言われておりますが、既に規制対象となっている四輪車の排出量が低減してきたことによって、相対的に二輪車による大気汚染への寄与率が増大しておる。そういう状況のもとで、特にベンゼン等の有害大気汚染物質を含む炭化水素については、二輪車による排出量が自動車全体の約二割を占めるに至っていることから、今回、二輪車を自動車排出ガス規制の対象として排出抑制対策を講ずるということにしたわけでございます。
 また、今回の改正で、二輪車製造業者が早急に対応して、より環境に優しい二輪車を販売することができる見通しがあるかというお尋ねでございますが、御指摘のとおりに、米国、ドイツ、オランダ、オーストリア等の欧米諸国のほか、タイやインド等のアジア諸国においても、二輪車に係る排出ガス規制が既に実施されております。我が国の二輪車製造業者はそれら諸外国の規制に対応して車両を製造し輸出している、こういう状態でございますので十分対応できると考えております。
 このような状況を踏まえまして、環境庁といたしましては、二輪車製造業者が我が国の国情に合わせた二輪車排出ガス規制に技術的に対応することは十分可能だと考えていますけれども、今後、中央環境審議会において、具体的な規制内容、規制開始時期について御審議をいただいた上で、できるだけ早期に排出ガス規制を実施してまいりたいというふうに考えております。(発言する者あり)
 質問が多岐にわたっておるものですから、大変恐縮でございます。
 最後でございますが、建築物の解体時のアスベスト対策についてのお尋ねでありますが、アスベストによる大気汚染の原因となる主な発生源としては、アスベスト製品等の製造工場、吹きつけアスベストが使われた建築物の解体等の現場、アスベスト廃棄物の処分過程等が挙げられますが、製造工場や廃棄物の処分過程等については、既に関係法令に基づく規制措置が講じられていることは先生御案内のとおりであります。
 一方、建築物の解体等の現場については、環境庁において、昭和六十二年以降、関係省庁とも協力しつつ行政指導に基づく対策を講じてまいりましたが、さきの阪神・淡路大震災後の震災地におけるアスベスト汚染の経験にかんがみますと法的規制がやはり必要だ、それを急がなきゃならぬということを認識いたしました。特に吹きつけアスベスト使用建築物につきましては、先ほど提案理由の中でも説明をいたしましたが、建築され始めてから約三十年経過しておりまして、今後、一斉にその建てかえのための解体が始まるというふうなことが予想されます。
 そういう立場に立って、有害大気汚染物質の一種であるアスベストをめぐる以上のような状況を踏まえまして、今般、有害大気汚染物質による健康影響の未然防止対策の一環として、改正法案に建築物の解体等に係るアスベストの規制措置を盛り込んだところであります。
 以上で終わりますが、どうぞ早急な法案の成立に御協力をいただきますようにお願いを申し上げます。

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